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2012/08/03
遺したものたちから
執筆者: hiromild (12:40 pm)
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私には、高村光太郎全集を全て読むことなんてできないから、 夫の付箋がついていて、私にもわかった詩を いつでも見ることができるように、ここに記しておきます。 資料の山をどうするか、今日やっと決めることができた記念に。 私も少しは目を通しましたと手を合わせられるように。 美しき落葉 私は交番の前で落葉をひろった。 篠懸木の大きな落葉だ。 軸を持つて日にすかすと、 金色と緑青とが半々に この少しちぢれた羽団扇を荘厳する。 私は落葉が何でも好きだ。 落葉はいつでもたつぷりとあつて温かで さらさらしてゐて執着はなく、 風がふけば飛び、 いつのまにか又いちめんに積み重なつて 秋の日をいつぱいに浴びてゐる。 落葉の匂ひは故国の匂ひ、 わけて落葉を焚く青い煙の親しさよ。 ああ林間に紅葉を焚いて酒を煖めた 昔の人のゆかしさよ。 今あたたむる酒はなくとも、 人よ、君の庭に山と積む落葉を焚いて 君が家庭農園の加里を得たまへ。 私は拾った篠懸木の一枚の葉を 如何に木で彫らうかと考へてゐる。 (昭和19年9月18日) |
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