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2012/08/03
遺したものたちから
執筆者: hiromild (12:48 pm)
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月にぬれた手 わたしの手は重たいから さうたやすくはひるがへらない。 手をくつがへせば雨となるとも 雨をおそれる手でもない。 山のすすきに月が照つて 今夜もしきりに栗がおちる。 栗は自然にはじけて落ち その音しづかに天地をつらぬく。 月を月天子とわたくしは呼ばない。 水のしたたる月の光は 死火山塊から遠く来る。 物そのものは皆うつくしく あへて中間の思念を要せぬ。 美は物に密着し、 心は造型の一義に住する。 また狐が畑を通る。 仲秋の月が明るく小さく南中する。 わたくしはもう一度 月にぬれた自分の手を見る。 (昭和25年) |
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